「もっと強く」と言いたくなるのはなぜ?|刺激の強さと身体の感覚を考える

※この記事は、以前「なぜ『気持ちいいだけの施術』は体を壊してしまうのか?」として書いた内容を、現在の福粋の考え方に合わせて見直したものです。

「もっと強く」と言いたくなるのはなぜ?|刺激の強さと身体の感覚を考える

マッサージや整体を受けている時、

「もう少し強くしてほしい」
「もっと押してほしい」
「これくらいだと効いた感じがしない」

と思うことがあります。

マッサージの圧が少し弱く感じているイメージ

強い刺激が好きなこと自体は、悪いことではありません。

しっかり押された方が心地よい方もいますし、強めの刺激を受けたあとにすっきりすると感じる方もいます。

ただ、私は長く施術の現場にいた中で、時々こんな疑問を持つようになりました。

「もっと強く」と感じる時、
身体の中では何が起きているのだろう?

このページでは、私自身が何度もマッサージを受けていた頃の体験と、温泉施設やリラクゼーション店で施術していた時に感じたことを振り返りながら、刺激の強さと身体の感覚について考えてみます。

私自身、だんだん強い圧が平気になっていきました

以前、リラクゼーションの仕事をしていた頃、私はよく他のセラピストの練習台になっていました。

私が相手を揉む。
そのお返しに、今度は私が揉んでもらう。

そんなことを繰り返していました。

もともとの私は、肩や背中を普通に親指で押されても、かなり強く感じる方だったと思います。

ところが、何か月か頻繁に揉まれているうちに、少しずつ変わっていきました。

身体の大きな力自慢の男性セラピストに強く押されても平気。

骨格的に強い圧を出しやすい女性セラピストに、かなりしっかり押されても平気。

以前なら痛いと感じていたような圧でも、上半身ではそれほど痛く感じなくなっていました。

面白かったのは、あまり揉まれていなかった脚です。

脚を同じように強く押されると、こちらはかなり痛く感じました。

その時、

「よく刺激を受けていた場所と、そうでない場所では、自分の感じ方がかなり違うんだな」

と思ったのを覚えています。

ただし、これは私自身に起きた体験です。

強い施術を受け続ければ、誰でも同じようになると言いたいわけではありません。

気づくと「どれだけ強い圧に耐えられるか」が面白くなっていました

強い圧が平気になってくると、不思議な余裕も生まれてきました。

強さに自信のあるセラピストが、かなり力を込めて押してくる。

それでも痛くない。

すると私は内心、

「まだまだ効かないよ」

と、少し勝ち誇ったような気持ちになることさえありました。

今振り返ると、この頃は少しだけ、

「身体を楽にするための施術」から、「どれだけ強い刺激に耐えられるか」へ、物差しがずれていた

のかもしれません。

強い刺激そのものが悪かった、という話ではありません。

ただ、いつの間にか「強いほどすごい」「このくらいでは効かない」という感覚が育っていくことはあるのだと思います。

現場では「もっと強く」と言われることが本当に多くありました

施術する側になってからも、「もっと強く」と言われることは何度もありました。

かなり強く押しているつもりでも、

「もう少し強くお願いします」

と言われる。

さらに強くしても、まだ物足りないと言われる。

そういう方もいました。

リラクゼーションの現場では、

「痛ぎもがいいですよ」

という言葉を耳にすることも多くありました。

痛いけれど気持ちいい。

それ自体は、その人が実際に感じている感覚です。

ただ私は、その言葉を聞きながら、

「痛いほど効いている」
「もっと痛い方が、もっと効く」

という物差しまで一緒に作られていかないだろうか、と気になることがありました。

お風呂上がりなのに、背中がガチガチの常連さんが多かった

リラクゼーション店より前に、温泉施設の手もみ処で働いていたことがあります。

そこへ来るお客さんの多くは、お風呂に入ったあとに施術を受けていました。

私は最初、

「身体が温まったあとだから、筋肉も比較的ゆるんでいる人が多いのかな」

と予想していました。

ところが実際には、常連さんを中心に、背中がかなり硬い方がたくさんいました。

セラピスト同士でも、常連さんが来る前に、

「あの人、硬いんだよね」

という話が出ることがありました。

私はその様子を見ながら、

「なぜ、これほど定期的に揉まれている人たちの身体が、こんなに硬いのだろう?」

と疑問に思うようになりました。

もちろん、筋肉が硬い理由を、マッサージだけに決めつけることはできません。

仕事や姿勢、疲労、睡眠、運動量など、いろいろなことが関係します。

ただ私は、

「強い刺激を受け続けていることも、何か関係しているのだろうか」

と考えるようになりました。

「もっと強く」に、施術者も引っ張られていくことがあります

受ける方が、

「もっと強く」

と言う。

施術者は、それに応えようとして強く押す。

次に来た時には、以前と同じ強さでは物足りなく感じる。

また、少し強くする。

こうした流れが、もし続いていけば、

「身体に合っているか」よりも、「強く感じるか」が基準になっていくこともあるのではないか。

私は現場で、そんなことを考えていました。

当時のベテランセラピストの中には、かなり硬い常連さんに対応するため、親指の先を使って強い刺激を入れるような押し方をしている人もいました。

それを見ながら、

「強さを求める側と、強さで応えようとする側が、お互いに少しずつ基準を上げているのではないか」

と思うこともありました。

ただ、これも私が現場を見て感じていたことです。

すべての人に同じことが起きている、と言いたいわけではありません。

「もっと強く」の理由は、一つではありません

今なら、「もっと強く」と言われた時に、すぐに

「感覚が鈍くなっているからだ」

とは決めません。

理由はいろいろ考えられます。

  • もともと強い刺激が好きなのかもしれない
  • その場所のつらさが強く、はっきりした刺激を求めているのかもしれない
  • 長く強めの施術を受けてきて、そのくらいが普通になっているのかもしれない
  • 「強い=効いている」という経験が積み重なっているのかもしれない
  • ただ今日は、いつもより強めに受けたい気分なのかもしれない

本人にも、すぐには分からないかもしれません。

施術者にも分からないことがあります。

だから、「もっと強く」という言葉を、
単なる注文ではなく、今の身体を知るための一つの情報として見る。

今は、その方が自然だと感じています。

「強く押してほしい」が目的なら、それも一つの選択です

施術を受ける目的は、人によって違います。

「今日はとにかく強く押してもらいたい」

という方もいるでしょう。

その場合は、「強く押されること」そのものが目的の一つです。

ただ、多くの方は、

「肩を楽にしたい」
「腰を軽くしたい」
「疲れを取りたい」
「今より健康的に過ごしたい」

という思いで施術を受けていると思います。

そうであれば、

希望された強さにそのまま合わせることと、その人の目的に近づくことは、本当に同じだろうか。

と考えてもいいと思います。

その場でスッキリすることも、大切な反応です

強く押したあと、その場でつらさが引っ込むように感じることがあります。

実際、施術後に笑顔になったり、すっきりした表情になる方もいました。

施術後は楽に感じても、腰のつらさを繰り返しているイメージ

その変化を、

「一時的だから意味がない」

と否定する必要はありません。

その瞬間に楽になれたことには、その人なりの意味があります。

ただ、そこで終わらず、

「その日の夜はどうだっただろう?」
「次の日はどうだっただろう?」
「同じ場所はどう変わっただろう?」

と、その後の身体も見てみます。

その場のスッキリ感も一つの情報。

その後の反応も一つの情報。

どちらか一方だけを答えにしなくていいと思っています。

施術者側も、「もっと強く」という言葉に反応します

お客さんに、

「もっと強くお願いします」

と言われると、施術者側にもいろいろな反応が起こります。

私自身、以前はその言葉を聞くと、少し

「自分の施術は弱いのだろうか」
「下手だと思われているのだろうか」

という感覚になることがありました。

特に、よく来ている常連さんや、触った瞬間にかなり身体が硬い方、マッサージを受け慣れていそうな方を見ると、

「この人はきっと強い圧を求めるだろう」

と、こちらが先回りして考えることもありました。

そして、最初から少し強めに施術する。

今振り返ると、そこには、

「弱いと思われたくない」
「下手だと思われたくない」

という、自分のプライドを守るような気持ちもあったのだと思います。

圧の強さを決めているのは、
受ける人の身体だけではないことがあります。

施術者側の不安や経験、思い込みが入ることもあります。

これは私自身にあった反応です。

他の施術者にも同じことがあるのかは分かりません。

ただ、

「もっと強くと言われたくない」
「強く押せる人だと思われたい」
「満足して帰ってもらいたい」

という気持ちが、施術者側の圧の選び方に影響することはあるのではないか、と感じています。

だからこそ今は、施術者側にも、

「なぜ私は今、この強さを選ぼうとしているのだろう?」

という問いが必要だと思っています。

お客さんの身体を見た結果、この圧を選んでいるのか。

それとも、

「弱いと思われたくない」
「もっと効かせたい」

という自分自身の気持ちに押されているのか。

その二つは、同じように強く押していても、意味が違うと思います。

強い・弱いより、「今の身体はどう受け取っている?」

強い刺激が合う人もいると思います。

弱い刺激が合う人もいます。

同じ人でも、日によって違うことがあります。

だから、

「強い方が効く」
「弱い方が正しい」

と先に答えを決める必要はありません。

大切なのは、

この刺激を、今の身体はどう受け取っているのだろう?

と見ることだと思っています。

福粋では、弱い刺激を選んでいます

福粋では、かなり弱い刺激を使って施術しています。

それは、

「強い刺激は悪い」

と考えているからではありません。

私自身がいろいろな施術を経験し、強く押す施術もしてきた中で、

弱い刺激の中で身体がどう反応するのかを見る方が、自分には自然だ

と感じるようになったからです。

強さを足していくのではなく、刺激を小さくしてみる。

その時、呼吸はどうなるのか。

身体の力はどう変わるのか。

動いた時の感じはどうなのか。

本人は何を感じているのか。

そうしたものを見ながら施術を組み立てています。

「もっと強く」と思った時、自分に聞いてみる

もし施術を受けている時に、

「もっと強くしてほしい」

と感じたら、その希望を我慢する必要はありません。

そのまま施術者に伝えて大丈夫です。

そのうえで、少しだけ自分にも問いかけてみます。

このくらいでは、何も感じないのだろうか。
もっと強い刺激そのものが好きなのだろうか。
「効いている感じ」がほしいのだろうか。
その場所が、それほどつらいのだろうか。
この刺激を受けたあと、身体はどう感じているだろう。

答えが出なくても大丈夫です。

「もっと強くしてほしいと思っている自分がいる」

と気づくだけでも、一つの身体の情報です。

最後に|強さを競うのではなく、身体を見る

私は自分自身が、強い圧にどんどん慣れていった時期を経験しました。

そして施術者としても、

「もっと強く」

と言われ続ける現場を経験しました。

その両方を経験したからこそ、今は、

「強く押せること」

そのものには、以前ほど価値を置かなくなりました。

強さに耐えられることも、競わなくていい。

施術者も、どこまで強く押せるかを競わなくていい。

それよりも、

「なぜ、この強さなのだろう?」
「この刺激を、今の身体はどう受け取っているのだろう?」

と見てみる。

私は今、その方が施術のど真ん中に近いように感じています。

福粋では、その中でも弱い圧を選びながら、身体がどのように反応するのかを静かに見ています。

もし今、

「強く押してもらわないと効いた気がしない」
「以前より強い刺激を求めるようになった気がする」
「自分にはどのくらいの刺激が合っているのだろう」

と感じている場合は、すぐに答えを決めなくても大丈夫です。

まず今の身体が何を感じているのか、そこから見てみてもいいと思います。

自宅で落ち着いて整体についてLINE相談しているイメージ

来院を決める前でも、LINEからご相談いただけます。

今感じていることを、うまく整理できていなくても大丈夫です。